指す将順位戦 第4局 棚橋さん戦
さて、皮算用の時間である。
指す将順位戦B級3組は10人で構成されており、1位に指す将の称号が与えられるそうだ。
10人というのはプロのA級順位戦と同じ人数である。A級順位戦で1位となり名人挑戦するのは大体毎年7勝2敗くらいの成績だろうか。2015年に6勝3敗で広瀬八段、久保九段、渡辺二冠、行方八段の四人でプレーオフを戦っていたことは記憶に新しい。1位になるためには余裕をもって7勝しておきたいところか。
幸運なことに僕は現在4勝0敗という好成績で来ているので残りを3勝2敗で切り抜ければいいことになる。簡単ではないが、7勝2敗よりは現実的な数字に思える。
が、ひとつ問題がある。たとえ7勝や8勝できたとしても全勝者がいた場合、当然ながら1位ではないということである。
そして今回の対局相手、棚橋さんはここまで3勝0敗で全勝。
全勝者には消えてもらわねばならぬ。全勝者潰すべし慈悲はない。
レーティングも500程度上回られていて一層気合が入るところであり、今回こそは対策を考えて対局に臨もうと考えた。順位戦をいくつか観戦したところどうやら棚橋さんは居玉党のようである。居玉に・・・、対策・・・?
・・・うん!対策わからん!なんくるないさ!じぶん完璧だからな!(諦め)
前回から引き続き、とりあえず板チョコを買って臨んだ。ゲンは担ぐタイプ。
先手aqua 後手 棚橋さん
▲7六歩△7四歩▲2六歩△7二銀▲2五歩△3二銀▲4八銀△7三銀▲5六歩
△6四銀▲5七銀△5二金右▲7八金△5四歩▲2四歩△同 歩▲同 飛
△2三歩▲2八飛(第一図)
(第一図は▲2八飛まで)
棚橋さんが「aquaさんにぶつける戦法決めた」とツイートしていたので、楽しみにしていると、2手目に7筋の歩が飛び出してきた。袖飛車だ。某アイドルを思い出し、自然と笑みがこぼれた。しかしまさか袖飛車だとは予想できていなかったのでやっぱり作戦は立てないのが吉。対策もよくわからないので適当に進めていく。
ただ、△3二銀はありがたいと思った。相手が角道を開けづらくなったと同時に、こちらの攻めの方針が立った。
△5三金▲4六歩△4四歩▲3六歩△7五歩▲同 歩△7二飛▲3七桂△3四歩▲4五歩△7五飛▲4四歩△3五歩(第二図)
(第二図は△3五歩まで)
皆さんは二枚落ちの「二歩突っ切り」という戦法をご存じだろうか。下のA図のように
(A図は△6五歩まで 先手の駒台の大駒はないものとして考えてください)
角の利きを活かして6,7筋の位をとり、そこから石田流のように組んで攻める戦法だ。詳しくは「鬼の花村・将棋指南」をチェック!(面白くて僕が高校時代何回も読み返した珍しい棋書。高校の部室に置いてきたのを若干後悔している。)
本譜第一図の後手も△3二銀と上がってしまったため3四歩を突くことができず、こちらだけが角を使えるようになっている。二歩突っ切りをイメージして4筋、3筋と歩、桂を進軍させていき、さっそく▲4五歩と開戦した。後手も△7五飛~△3五歩と受けながら反撃してきたものの、こちらの攻めのほうが速いという自信があったためそのまま斬りこんだ。
▲4三歩成△8八角成▲5三と△9五角▲7七歩△9九馬▲9六歩△8四角▲6六銀△7一飛(第三図)
(第三図は△7一飛まで)
▲4三歩成とすると△8八角成は必然だが、そこで▲5三と が用意の一手。これが詰めろなため、この順に踏み込んだ。これで△同銀と手を戻すと▲8八銀で先手の金得となってしまうため実質ゲームセットである。これで受けがないと思っていたため、▲5三と としてもしかすると後手投了するのではないかとさえ思っていた。実際この局面で棚橋さんも時間を一分以上は使っていたように思う。しかし△9五角があった。王手しながら自玉の詰めろを消す好手だ。▲7七歩に△9九馬としてこれで後手は馬を逃がすことに成功し、角と金の交換となった。しかし5三のと金に負けはなしの格言から、先手悪くはないと考えていた。しかし続く▲9六歩はどうだったか。とりあえず6二を守り詰みを消している角にどいてもらいたかったのだが、△8四角とされて中央に角の利きが通ってきた。この角がのちのち利いてくることになる。
▲6三と△8九馬▲6四と△3六歩▲3八歩△3七歩成▲同 歩△4六歩▲4八歩
△4五桂▲5三と(第四図)
(第四図は▲5三と まで)
▲6三と~▲6四と は悠長かと思ったが、まあなにはともあれ銀を取れた。(急に雑な解説)しかし先手がそんな悠長なことをしている間に後手は待望の△3六歩を決行。▲3八歩と謝り、△3七歩成▲同 歩と進む。もし後手がパスのような手を指せば▲4八飛と遊び駒を活用したいと考えていたが、ここで△4六歩が飛んできた。これに▲4八飛と回ると△4七香がある。さすがここまで3戦全勝しているだけあって好きな手ばかり指させてはもらえない。3筋に続いてここでも▲4八歩と謝る。続く△4五桂には▲5三と とした。これは△5三桂成▲同銀△同角成という単純な中央突破は許さないという意味である。(▲6二金までの一手詰め)
△6一香▲2五飛△3三桂▲3五飛△7八馬▲同 銀△4四金▲3六飛△7二飛▲3四金△同 金▲同 飛△6六香▲6三角(第五図)
(第五図は▲6三角まで)
後手の攻防手△6一香に対し、こちらは▲2五飛と浮いた。後手は(先手もだが)居玉なだけに桂馬を取られると先手から次に▲4三桂などの厳しい手がある。△3三桂と遊び駒を活用してそれを防ぐが、▲3五飛が次の▲3三飛成(△同銀には▲4三桂で詰み)を見て味がよい。△7八馬~△4四金としてそれを防いできたが、虎の子の馬を切ってしまう言うなればこれは非常手段であり、素直に▲3六飛と引いた場面では優勢を意識した。しかし△7二飛▲3四金△同 金▲同 飛(飛車が遊んでいたため▲5四飛と活用したかった)△6六香と進んだあとの▲6三角が問題だった。
△6八銀▲同 玉△6七香成▲同 銀△5七桂成▲7八玉△6七成桂▲8九玉△8八銀▲同 玉△7七飛成まで後手勝ち
(投了図は△7七飛成まで)
やったねたえちゃん!当初の目標どおり全勝者がひとり消えたよ!(白目)
第五図の先手玉には詰みがあるのである。△6六香の時点で自玉が寄るのではないかと思い、本譜と同じ手順を読んでいたのだが、飛車が成ってきても自玉には一手余裕があると錯覚していた。つまり飛車は成れない。飛車が動けないのであれば▲6三角と数の攻めで押し切れるだろう・・・。そう思っていた。9筋の歩が突いてあることも自玉の安定度を測り損ねた原因あったかもしれない。
▲6三角では▲6六同歩が正着で、まだ長い戦いが続いていた。感想戦では、第四図のあとの▲2五飛に代えて▲8二銀がよかったとされた。飛車をいじめながら8一の桂馬も狙っており、同じように桂馬を狙う手でもこちらのほうが受けづらかった。
本局は序中盤を有利に進めることができたが、終盤での読み違いから隙をついて逆転されてしまった。終盤力不足というのもあるが、居玉の経験値の差もあったように思える。
・・・相手の土俵で戦うのはさすがに頭が悪かったのではないかといまとなっては思わなくもない。やっぱり対策は考えるべき。
でもたぶん次回までには忘れちゃうんだろうなあ・・・。
棚橋さんも将棋アイオーで自戦記を書かれているので、そちらもあわせて読むと両者の読みの違いなどが出て面白いかもしれない。
棚橋さんの自戦記はこちら↓
aquaさん 対 棚橋 | Shogi.io(将棋アイオー) https://t.co/cK7Bv75CIt #shogi_io
「文才の激しい」 #とは
指す将順位戦 第3局 ポールさん戦
1月28日、ベッドの上でのんべんだらりと過ごしているとtwitterのダイレクトメールが来ていた。ポールさんからだった。
要約すると「順位戦そろそろやりませんか? 29日、31日、2月2日のどこかでどうでしょうか?」という内容だった。僕は前日に大学のテストも終わっており、春休みに突入していたのでいつでもよかったが、先延ばしにしてしまうと予定が入ってしまう可能性もあったので思考停止で「明日(29日)にしましょう」と返信した。
だから今回も特に対策はできていない。(これが言いたかっただけ)
ただ、直前にツイッターを見ているとポールさんが景気付けにカツ丼を食べていることがわかったので、家にあった2枚の板チョコで対抗し、さらに前回の反省を踏まえ通信切れを防ぐために事前にタブレットとスマホの電源は切った。
先手ポールさん 後手aqua
▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲7八飛△8五歩▲7七角△6二銀▲6八銀△4二玉▲4八玉△3二玉▲1六歩△1四歩▲3八玉△5四歩▲5六歩△5二金右▲2八玉△3三角▲5八金左△5三銀▲3八銀△2二玉▲4六歩△3二銀▲5七銀△2四歩(第一図)
(第一図は△2四歩まで)
戦法だけは決めておこうと思い、先手なら久々に指したい戦法があったのでそれを、後手ならば相手に追従して指すことに決めていた。
今回は後手となったのでその戦法はおあずけだ。
戦型は先手の三間飛車となった。囲いを穴熊にしようか一瞬迷ったが、ちょっと前に棋譜中継で中田功先生が二日連続で穴熊を解体したのを見てから穴熊をあまり信用できていないのでやめた。
▲3六歩 △4四歩▲3七桂 △4三金 ▲4七金 △5一角 ▲6五歩 △3三桂▲7五歩 (第二図)
(第二図は▲7五歩まで)
角の利きを活かした攻めがこわかったので△4四歩~△3三桂と組み、角は5一~8四と展開・・・、したかった。△3三桂と跳ねたところで▲7五歩と突かれ、ディスプレイの前で「あ”っ」と声が出た。
相手の飛車先なのでうかつに突くと捌かれてしまいそうで後回しにしていたのだが、どこかで先に7四歩は突いておくべきだった。
△4二角と活用する手もあったが、一度引いた角を戻すのは癪だった。本譜は多少無理気味の開戦といえる。
△6四歩▲6六銀△6二飛▲6八飛△9四歩▲2六歩 △2三銀 ▲5五歩△同 歩 ▲4五歩 △5四銀▲6四歩 △同 飛 ▲6五歩 △8四飛 (第三図)
(第三図は△8四飛まで)
互いに飛車を6筋に振り直し、本格的な戦いが始まった。途中△9四歩と突いたのは▲7四歩△同歩▲9五角という手が見えたからである。戦いを仕掛ける前に突いておいたほうがよかったかと思う。
先手は振り飛車らしく5筋、4筋と歩をぶつけ、戦線を拡大してくる。何も考えずに対応していくといわゆる「これにて振り飛車大楽勝(by鈴木八段)」となりかねない。ここからが考えどころだ。
▲5五銀 △同 銀▲同 角 △4五歩 ▲同 桂 △4六歩 ▲3三桂成 △同 角▲同角成 △同 金 ▲3七金 △4五桂 (第四図)
(第四図は△4五桂まで)
5五の地点で銀を交換しあって△4五歩と手を戻し、▲同桂に△4六歩が狙いの一手。3三で桂と角も交換し、さらに玉が薄くなってしまったが△4六歩が遅れて先手で残っている。同金ととると5七銀があるためこれは取れない。▲3七金に対し△4五桂と好調に攻めることができ気分がよい。ここで優勢を意識した。
▲4八銀 △5五角▲6六角 △3七桂成 ▲同銀左 △6六角 ▲同 飛 △8八角▲4六飛 △4四歩 ▲7七角 △7九角成 ▲5六飛 △4三金打(第五図)
(第五図は△4三金打まで)
優勢を意識した・・・、のだが▲4八銀が粘りの好手でなかなか決めきれない。△5五角をいれてなんとか攻め倒せないかと考えるもどうもうまくいかない。口の中のチョコレートが甘ったるく感じた。一度清算し、筋が悪いと自覚しながらも△8八角と打った。 ▲4六飛に対しても歩を連打し先手を取ることなく△4四歩と収め、▲5六飛に対しても△4三金打と辛抱する。ゆっくりと駒得を主張する指し方だ。対局中は、まだ少しこちらがいいはずだが、どこかでおかしくしたなと思いながら指していた。
▲5九飛 △7八馬 ▲5五桂 △5三金 ▲5四歩 △同 飛
▲6三桂成 △5九飛成 ▲同 角 △6三金 ▲6一飛 △5二銀
▲8一飛成 △4五桂 (第六図)
(第六図は△4五桂まで)
▲5五桂~▲6三桂成と進み、5九の地点で飛車交換となったが、桂馬は4三に成ったほうがよかった。(A図)
(A図は▲4三桂成まで)
△5九飛成とすると▲3三成桂と王手で金をとられてしまうのでこちらは△同金右とするよりないが、▲5四飛△同金と進むと本譜より金の位置が悪く後手陣が乱れている。先手はこちらを選ぶべきだったか。
しかし本譜も自陣にさらに銀を投入した結果、攻め駒不足に陥り苦しい展開となった。せっかく自陣に投入した金をタダでとられるのはまずいと思い△5二銀としたが、これは指しすぎで6三の金を取られても代えて△3二銀と節約すべきだった。
再度△4五桂と打ってみたものの持ち駒が飛車だけでは迫力がない。
▲6四歩 △5三金 ▲6五桂 △3二銀▲5三桂成 △同 銀 ▲6三歩成
(第七図)
(第七図は▲6三歩成まで)
ぱたぱたと手が進み、簡単にと金ができてしまった。これ以上受けていても仕方ないと思い、反撃に出る。
△5八歩 ▲4八角 △3七桂成▲同 角 △4五桂 ▲7三角成 △5九歩成 ▲同 金 △8九馬(第八図)
(第八図は△8九馬まで)
まずは△5八歩と叩き、3七の地点を守っている角をいじめる。そして △3七桂成▲同 角 △4五桂とみたび桂馬をうってしつこく3七の地点を狙った。これに対しては▲4八角と逃げるだろうと思っていたが▲7三角成と逃げられて今度は「へっ!?」と声が出た。
そんなところ行けたの・・・?そうだよねさっき8一の桂馬取られたもんね・・・。これは失敗した・・・。ちくしょうまた読みぬけだ・・・。この手順はお前の人生そのものだ・・・。誰もお前を愛さない・・・。
半分魂が抜けかけて戦意喪失ぎみになったが、とりあえず歩を成り捨てて形を乱し、△8九馬と攻め駒を補充した。
▲5三と △5七飛 ▲4七桂 △5九飛成 ▲2九金 △4八銀
▲4二と △3七金 ▲同 銀 △同桂成 ▲同 馬 △同銀成
▲同 玉 △4八角 ▲2八玉 △3七銀まで124手で後手の勝ち
(投了図)
△5七飛が5九の金と2七、3七をにらむ狙っていた手だったが、これにどう対応してくるかがわからなかった。▲4八金、▲4八銀、もしくは無視して▲4二となどの攻め合いもあるだろう。本譜は▲4七桂だったので金をとることができ、持ち直したと感じた。自玉もギリギリのところまで攻められたが、以下は当初の予定通り3七の地点を攻め、最後は△4八角からの即詰みを見つけることができ、なんとか勝つことができた。
本局は第四図あたりで優勢となったが、そこからじわじわと追い付かれる展開となった。しかし終盤ではあやしい手を交えながらもなんとか勝つことができた。優勢になってから押し切る力が足りていないことを痛感した一局となった。
対局相手のポールさん、観戦してくださったみなさん、ありがとうございました。
後日談というか、今回のオチ。
・・・実は終盤までほぼ互角だったなこれ?
糸冬
制作・著作
指す将順位戦 第2局 右の左にネさん戦
初めて望外という言葉を見たのは将棋世界だったと思う。
インタビューなんかで「望外の2連勝となりました」なんて書いてあるわけだが、正直言うと「ウッソだぁ!勝てると思って対局しに行くに決まってるよ!」と思っていた。
で。今年の頭から行われている指す将順位戦なるものに参加しているのだが、気づけば開幕から2連勝していた。
嘘じゃなかったわ・・・。連勝できると思ってなかったわ・・・。
実際、第一局も第二局もギリギリの戦いで、勝ちを拾ったという表現がぴったりの内容だった。しかし逆に考えれば運がツイているとも言えるかもしれない。せっかくなのでこの勢いのまま乗り切りたいところ。
しかしまあ課題が忙しかったこともあり、特に対策することもできず当日を迎えた。将棋ウォーズは一日6局やっていたが、あとは3月のライオンやドリフターズを読んで過ごしていた。まあ3月のライオン読んどけばなんとかなるでしょ。(適当)当日やったことといえば終盤でひっくり返されないよう、早めに風呂に入っておいたことくらいである。(藤井ファンの戯言)
いままで気負いすぎて何かに臨んで成功したためしもなかったため、頭をまっさらにして対局に臨んだ。
先手aqua 後手 右の左にネさん
▲7六歩△3四歩▲2六歩(第一図)
(第一図は▲2六歩まで)
早速お前藤井ファンじゃなかったのかと言われそうであるが最近スマホで将棋ウォーズの新しい居飛車用のアカウントを作り数局指してみたところ、居飛車も悪くないなと思い始めたのである。また、ドリフターズを読んでいたのでギリギリの斬り合いをやってみたくなったというのもある。首おいてけー。
△8八角成▲同銀△6五角(第二図)
(第二図は△6五角まで)
戦型は筋違い角となった。
主に奇襲に分類される戦法だが、僕はあまり驚いていなかった。むしろテンションが上がった。
なぜならこの日までずっと3月のライオンを読んでいたからである。
やっぱりライオン読んどいて正解だったじゃないか。(後付け)
▲4八銀△7六角▲7八金△4四歩▲4六歩△5四角▲5六歩△5二金右▲7七銀△8四歩▲2五歩△2二銀▲4七銀△3二金▲5五歩△6五角▲5八玉(第三図)
(第三図は▲5八玉まで)
しばらく駒組みが続く。筋違い角といっても居飛車に組むか、振り飛車(主に向かい飛車)に組むかの2通りがあるが、今回は居飛車を選択してきた。図の5八玉は変に見えるかもしれないが、相手は居飛車の陣形をしているので、相手は角を使って8七の地点を棒銀のように攻める展開にしてくる可能性が高い。そうなると玉は8八にいるよりは5八あたりで右玉のようにしたほうがよい、と思った。うちの激指先生は疑問手と言っている。そりゃそうだ。玉薄いもの。
そしてこの先、この手を何度か後悔することになる。
△7二銀▲6六歩△4三角▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2八飛△8五歩▲3六歩△8三銀▲4五歩△3一金▲4四歩△3二角▲5六銀△7四銀▲7六歩(第四図)
(第四図は▲7六歩まで)
△7四銀は疑問手か。本譜のように7六歩と打たれて攻めが遅くなってしまったからである。前述したように棒銀で8七の地点を攻められるとこちらは単純な数の攻めが受けづらいので、銀は7四より8四に出たほうがよかったかもしれない。
△3三銀▲4八飛△6四歩▲4五銀△4二歩▲3八金△6五歩▲5四歩△同歩▲6五歩△同銀▲4九飛△5五歩▲6九飛△6三歩▲5三歩△同金▲4八玉(第五図)
(第五図は▲4八玉まで)
▲4八飛と回り、相手の陣形をへこませたところは気持ちがいいが、玉飛接近の悪型なうえ、相手の銀も5段目に進出してきた。単騎でやってきているだけなのだが、こちらの玉と近く、威圧感がある。
とりあえず振り飛車の格言にあるように▲6九飛と戦いの起こった筋に飛車を転回した。しかし△6三歩と簡単にすぐの成りこみは防がれてしまい、▲6九飛自体はあまりよい手ではなかったように思う。ただ、感想戦で触れられたように後手は△6三歩に代えて6四歩のほうがよかったかもしれない。銀を直接支えているので▲5四歩などとして角の効きを止められても銀が取られないからである。
と、ここで突然、「ピロッ」という間抜けな音が聞こえた。投了のときに耳にする音だ。「え?ここで投了?いくらなんでも早くない?」と思いチャット欄を見ると「あなたの通信がきれました!」の文字が。このとき屋外でスマートフォンなどで通信していたわけでもなく、Wifi環境のある家の中でPCで将棋倶楽部24にログインしていたので、予想外の出来事に頭が追い付かなかった。通信のことはよくわからないが、とりあえずタブレットの電源を切って家の中の通信機器を減らした。
対戦相手の右の左にネさん、そして観戦してくださっていたみなさん、ご迷惑をおかけしました。
対局のほうに戻ると、相手の攻めは迫力がある。△7六銀▲同銀△同角と進むと銀交換を果たしたうえで7六角が王手でこちらが後手を引きそうだ。玉が薄いので一度の王手で形を乱されることも怖かった。とりあえず▲5四歩として角道を社団法人したものの、そのまま△5五歩と伸ばされてしまい、玉にプレッシャーがかかってきてしまった。
4筋を制圧しているとはいえ、こちらもそろそろ攻めの手を指して相手陣を乱していかなければまずいかと考えた。自玉が自玉なだけに攻められると一瞬で負けてしまう恐れもある。
そこで▲5三歩△同金▲5四歩△同銀(△5二金なら▲6五飛で銀がとれる)▲同銀△同角▲7一角(A図)
(A図)
などとしてなんとか6三に飛車が成りこめないかと考え、とりあえず▲5三歩と叩いたのだが、よく考えると図から5四の角が3六に出る手が王手である。7六角が王手なのをきらってこの順を選ぼうというのに結局同じではお話にならない。こちらの攻めが切れる形ではなく悪い順ではないのかもしれないが、玉が薄いことや、3六角が玉だけでなく飛車まで睨んでいることから感覚的に怖く、選べなかった。
そこで、どう考えても手の流れがおかしいのだが△4八玉と自重した。
△6二玉▲2六角(第六図)
(第六図は▲2六角まで)
自重して一手守りに使った(守りと言えるのか?)ものの、自玉が薄いことには変わりはない。相手が6二玉と上がったところで目をつぶって▲2六角と打った。こちらは角を手持ちにしていることも主張のひとつであったため、角を手放して戦果を挙げられなかった場合、不利になる可能性が高い。決断の一手だった。
△5一玉▲4三歩成△同金▲7一角成△8四飛▲6五飛△4四金▲6三飛成△4三角▲4四銀△同飛▲同馬△同銀▲8二飛△7四角▲5二金 まで先手勝ち
(終局図は▲5二金まで)
これに対しては△8四飛が正着だったようだ。本譜は角を成りながら銀得を果たすことができた。確実に優勢ではあるのだが、右辺に逃げられてグダグダになってしまうと自分の実力では玉が薄すぎて逆転を食らわない自信はない。△4三角など粘りの一手を振り切り、以下はなんとか攻め切ることができた。
内容としては、▲2六角からの攻めがうまく決まり勝てたと言えるが、薄い玉に慣れていなかったからか、やりづらさを感じていた。玉飛接近の形で戦うことにもなり、序盤の構想があまりよくなかったか。
望外の3連勝となったが、ネット対局であまり相手を意識せずに戦うことができたことが大きいと思う。4戦目も頑張りたい。
対局してくださった右の左にネさん、観戦してくださったみなさん、ありがとうございました。
自戦記を書くのはは初めてのことで、拙いところも多かったとは思いますが、読んでいただきありがとうございました。